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昔話Ⅱ

過去の旅
05 /09 2010
昨日の続きです・・・。


奥日光に着いた。

子供達は大きなホテルに泊るが、バスの乗務員は流される。

流される・・・とは、お客さんとは違う場所に泊るという業界用語。


ホテルの隣のこじんまりした民宿が今夜の宿だ。

その日は5台のバスなので、乗務員は全部で10人、男女に分かれて部屋に入る。

「ただいま~」とご主人に声をかける。

9月の下旬から11月初旬まで、1日おきにここに泊っているのだ。

我が家とこの民宿の往復が約2ヶ月続く。


この日は新人のガイドが2名、そしてみーが乗車しているバスは新車の為、

明日のいろは坂を下りるのは初めて。

2人の新人ガイドを連れて、新社のバスの試運転も兼ねて夕食前にいろは坂に向かう。

いろは坂は、上りと下りに分かれた一方通行だ。

上りは新しく作られているため比較的カーブが緩やかだが、

下りは、なんと明治時代に作られたものを修復しながら使っているため、

道幅が極端に狭く、カーブがものすごくきつい。


乗用車ならなんて事はないが、まさか明治の人がバスの事を考えて作るはずはないので、

ガードレールから下をのぞくとゾーッとするほどの崖である。

車体の全長が12メートルもあるバスはカーブを1度では曲がりきれない。

いわゆる切り返しながら下りて行く。


今は危険ということでしなくなったが、

当時切り返す時は、バスガイドが降り、前方と後方、車体の下を確認するために飛び降りることになる。

それを約20回繰り返しながら、しかもその間に観光ポイントの説明をしなければならず、大忙しである。


それを新人ガイドに伝授する。1号車のガイドの役目でもある。
(関東では1番ベテランが1号車に乗り、関西では一番後ろのバスにベテランが乗る、今は定かではない・・))

運転手は、新車のハンドルの癖や、ブレーキの効き具合を見るのだ。


無事に宿に戻り夕食を済ませると、10時までは明日の勉強会。

翌日の日程を把握し、ガイドポイントの練習、そして仕上げはご当地ソング練習。

「いろは坂の歌」を完全に覚えさせてから、入浴、就寝。


翌日のバスの出発は8時30分、8時には乗車できるようにする為、

6時起床、7時朝食、7時30分にはバスを開け、チェックを始める。

さあ、修学旅行2日目の始まり。


お猿の集団のような元気いっぱいの子供たちが笑顔で乗車。

まず、戦場ヶ原を見学、その後中禅寺湖で遊覧船にのり、

日本3大瀑布のひとつ、華厳の滝見学。


そして第一いろは坂を下る。

昨日乗り物酔いを見事クリアした少年には、手作りのハンドルをプレゼントし、

運転席のすぐ後ろに座らせる。


「これで運転手さんと一緒に道を見ながらぶつからないように運転してね!
 クラスメイトの命がかかっているから、頑張って!」


私は乗車口を開いたまま、いつでも飛びだせるように準備する。

何十回通っても緊張するいろは坂の下り線。

たくさんの命を預かる緊張感が走る。

私の誘導ミスで大惨事になるのだ。


48カーブ目が終わるとホッとする。




少年の事は半ば忘れかけていたが、彼も大役が果たせたらしく、ニコニコしていた。

ハッキリ言って子供だましだが、うまくいく事が多いのだ。

日光市内のレストランで昼食、お買い物。

そして帰路に就く。


可愛い手と握手しながらお別れ。

ガイドさん!ありがとう!口々に言ってくれる。


これがあるから続けられる。


車庫に帰り、洗車、簡単な掃除をして、後は専門の業者に任せる。

業務日報を書き、明日の仕事の確認。


明日は社員旅行で、伊豆半島の温泉に2泊の仕事だ。

今20時、明日は5時までに出勤だ。

どんな旅になるかな?

さあ、早く帰って伊豆の観光案内の復讐しなきゃ・・・・



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昔話

過去の旅
05 /08 2010
今、大好きな旅に出ている人のブログを読んでいて、
みーも旅の仕事をしていた時の回想録を書こうと思いつきました。

結婚するまでの約5年間、とあるバス会社で観光バスガイドの仕事をしてました。
その時には、3歳くらいから、100歳を超える人、外国人や芸能人、暴力○の方々。

多種多様な人を乗せて、西へ東へひた走り。

高速道路は現在の半分くらいしかなく、

今なら日帰りできる距離でも一泊しなければならない時代の話です。



10月のある日・・・・・小学生の修学旅行です。


学校前の道路には、見送りのお母さん達がたくさんいる。

・・・どのバスに乗るのかしら・・・

・・・どのガイドさんかしら・・・・

・・・あらっこの人だわ・・・・

制服、制帽をビシッと着こなし、自然な笑顔の私・・・じゃなくて、

連日の泊り仕事で、目の下は真っ黒、4時起きなので当然朝食抜きのフラフラのみーです。


そんな事はお構いなく、元気いっぱいの本日のお客さん乗車。

すでに車内はお祭り騒ぎ!

その中で1人、これからお葬式にでも行くような暗い少年がいた。

その様子を心配そうに見ている母。

その母に呼ばれた。


うちの子、ものすごく乗り物酔いするんです。
酔い止めは飲ませましたが、どうか、どうかよろしくお願いします。


さる山のような児童達を乗せて、バスは栃木県日光市に向かった。

青白い顔の少年もなんとかお昼まで我慢できた。

日光山内、東照宮、二荒山神社、輪王寺を見学して、

いよいよ奥日光に入る。

ここからが、大問題。

急なカーブが48もある、いろは坂を登るのだ。


ここは乗り物に強い人でもかなりきつい。
自家用車ならまだしも、バスは車高が高い分かなり揺れる。

ここでとっておきの知恵を少年に授けた。

あのね、絶対に酔わない方法があるけど試してみる?

少年はもちろん!と言った。

じゃ、明日お土産用のおこずかい全部出してみて!


真新しい財布から、3000円出した、彼の全財産だ。

そのお金を口にくわえさせた。

そして窓を全開に開けた。


さあ、ここから顔を出して・・・いろは坂が終わるまでそうしててね!


・・え・え~・・・となりの子が驚いている。


彼は言われたとおり、お金をくわえたまま顔を出している。


バスは右に左に大きくカーブする。

棚の荷物が落ちる、水筒がゆらゆらする。

キャーキャーと大喜びの児童達。


中禅寺湖が見えてきた、いろは坂は終わった。


さあ、もういいよ!お金をはなしてね。

少年は物凄い笑顔で、


やったよ!気持ち悪くならなかったよ、と言った。

他のクラスメイトから拍手が起こる。

あとは、戦場ヶ原のハイキング、そして今夜の宿に着く。


ホテルについて、降りる1人1人に声をかける。

お疲れさまでした、忘れ物はありませんか・・・・


少年は、明日食べる分のお菓子をひとつをみーにくれた。

はにかんで何か言ったけど、よく聞こえなかった。


さあ、バスの掃除だ。

1時間で終わらせよっと・・・・


続く・・・・

みー

宝塚歌劇団、元月組男役。
卒業生の瑞羽奏都さんの大ファンです。